her 世界でひとつの彼女
小さい頃、父の部屋にはエレキギターが数本と、
見ているだけで気が滅入るくらい大量のケーブルとAV機器があって、
それに負けじと、たくさんのレコードとビデオテープ(映画)が山積みになっていた。
あの映画はどうだった、とか
この俳優はどれそれの作品でデビューしたんだ、とか
あの監督のこの作品は素晴らしい、とか
この映画のあの音楽がいいんだよな、とかとか。。。
父はいつも夜な夜なそんな話を母とリビングで楽しそうに話していて。
深夜の大人の会話に、当時子どもだった私は参加できるはずもなく、
いつも布団の中から耳をダンボにして、こっそり聞いていた気がする。
ふだん物静かな父がどうしても早く伝えたくて、
いつもよりちょっぴり早口になって興奮気味に母に話していた姿と
それを表情豊かに、嬉しそうに、楽しそうに聞く母と。
今思い出すと何だかほっこり。
わたしにとっての父はとにかく物知りな人で、
母や私が質問すれば、どんなことでも答えてくれる人というイメージ。
今でも覚えているのは、私がふと
「パパはいろんなことしってるね。」
と言った時に、
「学校のお勉強を頑張ること以外に、たくさん本を読んで、映画を観て、音楽を聴くと、大体のことはわかるようになるよ。」
と言われたこと。
その時は、へえ。くらいにしか思わなかったけど、
今となってみると、なるほど確かに。何だか少し分かる気がする。
当時のパパのように物知りではないけど、
今の私は映画や音楽や小説・本を通して見た世界から色んなことを学んでいる、と思う。
さて、そんな私の大切な趣味にもなった映画鑑賞。
毎月どんな作品がリリースされているかな?とチェックする訳ですが、
12月はとんでもなく素敵な作品がDVDリリースされまくっておりました。
超話題作「Maleficent」から始まり、
スパイク・ジョーンズ監督の「her ~世界でひとつの彼女~」
実話を基に創られた「チョコレート・ドーナツ」
この3つが気になっていて11月からそわそわ。笑
リリースと同時に一気に鑑賞。
中でも、「her ~世界でひとつの彼女~」が自分史上TOP5に入るくらい
好きな映画のひとつになりました。
何がすごいって、そもそもの物語の設定がすごいんだけど、
超簡単に言えば、別居中の妻との離婚騒動に疲れ切った孤独な男が、
ある日ひょんなことから、人工知能搭載型の進化したOS1(Siriのもっとすごい版)を
購入し、人工知能を持ったOSに心奪われ、お付き合いする...という話。
ただのSF映画かと思いきや、近未来とか、相手がOSとか忘れちゃうくらいの
甘酸っぱさ100%、完璧なラブストーリーなのです。
恋の予感にウキウキしたり、
絆を深めて愛を知ったり、
お互いの成長(OSにとっては進化)によるすれ違いに悲しくなったり。
恋を知る人なら誰もが1度は経験する甘酸っぱい部分を、
一風変わったストーリーの中にたくさん詰め込んでくれている映画。
主演はホアキン・フェニックス。
OSのサマンサの声はスカーレット・ヨハンソン。
ホアキン・フェニックスは文句無しに表情のどれをとっても絶妙で、演技がうまいし
スカーレット・ヨハンソンの発する少しかすれたセクシーな声と丁寧に紡ぎ出されたであろうセリフのひとつひとつが相まって、終始、胸がチクチク、きゅんきゅんしてしまう。
君は僕のもの。あなたは私のもの。
ってお互いを縛り合える関係が、恋人同士だというけれど、
はてさて本当にそうだろうか。
肉体的に繋がることと、精神的に繋がることは、
一体どちらがより重要なのか。どちらを愛と呼ぶのだろうか。
そんなことを考えながら観ていると、
背景とのバランスが完璧なファッションや小物たち、
囁くように静かに流れてる音楽も素晴らしく、隙のない感じ。
愛ってなんだろう?って改めて考えさせられ、いろんなシーンに共感できました。
下手な恋愛映画を観るなら、コレ観ちゃって!とおススメしたくなる。
中でも、胸がぎゅうっと締め付けられたのは、
OSのサマンサが、主人公セオドア(ホアキン・フェニックス)と、
デートをしているシーン。
セオドアはイヤホンと小さなカメラ付きの端末を
胸ポケットに入れて出掛けることで、彼女とのデートを成立させている。
実際には隣にサマンサはいないけど、セオドアとサマンサが寄り添っている
ようにみえてしまうこのシーンは本当にすごく切ない。
『恋人同士で肩を寄せ合って電車に揺られる』
なんてあたりまえのように思えるけど、二人にとっては絶対に叶わない夢のような話。
サマンサはこのシーンでセオドアに、
「私たちって2人の写真がないでしょ、だからこの曲が代わりよ。」
と言って曲をプレゼント(イヤホンから流れてくる)する。
セオドアとサマンサが一緒に聴いた曲たちが、
それぞれの場所や、思い出を共有して、
写真のように、記録として、記憶として残っていく。
このシーンを観ながら、はあ。。とため息が出るほど
胸が締め付けられてしまった。
とにかく、恋を一度でもしたことがある人なら、
絶対に共感できるフレーズやシーンがいくつかはあるはず。
脇を固めるキャラクターたちも魅力たっぷりのこの映画。
何かのきっかけでこのブログを見て、興味を持ってくれたら、
ただただ嬉しい限りです。
次回は「チョコレート・ドーナツ」について。
コンスタントにブログ更新して、文章力付けられる練習を。←今度こそ忘れるな、自分!
See you soon!