LOVE GIVES LIFE

大好きな映画・小説・音楽から感じたこと、大好きな人たちとの日々をつらつら

インサイド・ルーウィン・デイヴィス 

 

週末、恒例のまったり映画タイム。

『インサイド・ルーウィン・デイヴィス』を鑑賞。

【※ちょこちょこシーンとセリフ紹介するので0から観たい方はお気を付けて...】

 

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2013年のカンヌ国際映画祭グランプリを受賞した本作。

今までフォークソングとやらに全く興味もなく、なんだか暗ーい世界の音楽...みたいなイメージであまりピンとこなかった。

知ってるか?と聞かれれば“ボブ・ディランなら聞いたことあるかな”程度でしか知らない私が楽しめるのか否か疑問に思いつつ観始めた。

 

出だし一発目。

最初のシーン(映画の中で後で効いてくる重要なシーン)で

オスカー・アイザック演じるルーウィンの歌声を聴いた瞬間から

何とも言えない安心感。コレは間違いないやつだ!と確信。笑

 

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「音楽が素敵な映画に悪い映画はない」と自分で思っている。

とにかくオスカー・アイザックの歌声がなんだか心地いい。

案の定、暗い歌詞で、暗い雰囲気のメロディーではあるものの、心の奥までゆっくり温まってくるような優しい感触が気持ちいい。

 

さらに、辛辣なセリフたちに、変わった登場人物たち。

彼らが織りなすフフッと吹き出してしまうような絶妙な間と表情に、あっという間に魅了されてしまう。

 

主人公の抱える悩みや問題に呼応するかのように計算されたカット割りも、観ていて楽しめる理由のひとつ。

コーエン兄弟監督の作品は、今までひとつも知らなかったけれど、

映画の中に伏線を散りばめたり、凝ったカット割りの得意な監督らしい。

いつもサスペンス・スリラー系の作品が多いんだとか。

 

そんなコーエン兄弟監督の待望作「インサイド・ルーウィン・デイヴィス」、

作品の舞台はまだ音楽レーベルなどが発達していなかった1961年。

NYのグリニッジ・ヴィレッジのライブハウスで歌う売れないフォークシンガーのルーウィン・デイヴィス(オスカー・アイザック)は一文無しで住所不定。

知り合いの家を泊まり歩き、カウチで眠る日々を過ごしている。

 

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そんな中、つい一夜の過ちで手を出した女友達ジーン(キャリー・マリガン)から「妊娠した」と衝撃の告白を受ける。

 

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彼女は妊娠と、冴えないルーウィンの姿にイライラが大爆発。

「ファッ○」だの「シッ○」だの半ば八つ当たりのような気もするがw、

とんでもない量の罵詈雑言を浴びせられてしまう。

 

ジーン「I don't know.(わからないのよ。)」

ルーウィン「You don't know if it's mine?(父親が俺か?)」

ジーン「No! How would I know!!(そうよ!なんで分かるわけ?!)

ルーウィン「So... It could be Jim's...?(ジムの子かもしれないだろ?)」

ジーン「Yes! asshole!(そうよ、バカたれ!)」

ルーウィン「You don't want it either way, to be clear?(正直言って、どのみち欲しくはないんだろ?)」

ジーン「To be clear asshole! You fucking asshole!I want very much to have if it's Jim's.That's what I want. But since I don't know, you not only fucked things up by fucking me and maybe making me pregnant, but even if it's not yours, I can't know that, so I might have to get rid of what might be perfectly fine baby, a baby I want, because everything you touch turns to shit!!!!!!!!!!

(正直言って、、この大バカたれが!もしジムの子なら絶対に産みたい。

でもあんたにヤラレタせいで父親は不明。あんたかどうかもね。だから理想の赤ん坊も堕ろすしかない。あんたが触ったものは、全部クソよ!!!!!!!)」

 

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ジーン「I should've had you wear double condoms. Well we shouldn't have done it in the first place, but if you ever do it again, which as a favor  to women everywhere, you should not, but if you do, you should be wearing condom on sondom and then wrap it in electrical tape. You should just walk around always inside a great big condom because you are shit!!!!!!!!!!!!

(ゴムを二重にすべきだった。そもそもやめるべきだった。もし今度、女への好意からヤル時はコンドームを2枚重ねにして絶縁テープで巻くこと。いっそ巨大なコンドームに体ごと入れとけ!クソ男!)」

ルーウィン「Okay.(分かったよ...)」

 

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彼女にガミガミ言われ、ルーウィンの気分は最悪。

加えて、仕方なく預かることになった猫までもが逃亡。

やっとのところ発見し捕まえるも、飼い主から「うちの子じゃない」と突き返される始末。

 

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所持金もなく、小遣い稼ぎに参加した友人のレコーディングでは、

自分の音楽性へのプライドから、バンドの雰囲気に迎合できずうまくいかない。

そんな中、ひょんなきっかけでヤク中ジャズミュージシャンのローランド(ジョン・グッドマン)と付き人ジョニー(ギャレット・ヘドラント)とのシカゴへのドライブにギター1本と1匹を抱えて参加することに。

 

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このドライブがまたルーウィンにとっては悪夢のような時間だった。

無愛想な付き人ジョニーに、傲慢で毒舌で鬱陶しいおしゃべりなローランドのペースにいまいちついていけずに、噛み合わない。

 

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ルーウィン「タバコある?」

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ジョニー「全部吸った。」

 

ーーーーーしばらく経ってーーーーー

 

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ローランド「(不快なイビキ)」

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ルーウィン「 ................ 」

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ジョニー「 .............. 」

 

タバコあるんかい!と突っ込みたくなるこのシーン。笑

実際に観ると、ほんの数秒の間に繰り広げられるギャレット・ヘドラントとオスカー・アイザックの間と表情が、最高に面白い。

 

なんと最悪な出来事はコレだけに留まらない。

シカゴへのドライブも、ある出来事をきっかけに道半ばで断念。

雪の中、ヒッチハイクをするはめになり、

ぐちゃぐちゃになった靴でダイナーに入りコーヒーで粘るも追い出され、仕方なく駅の構内で眠っているとホームレスに間違われ警官に締め出される。

 

やっとの思いでシカゴに着き、有名な音楽プロデューサーに会いにいくも

再び音楽性への信念を曲げられずうまくいかない。

NYへ戻ってからも、父の病気、姉との関係、音楽を諦め船員に戻ろうと、未払いの組合費を全財産で支払うも、船員免許証を紛失。再発行には80ドル以上もかかる、といわれルーウィンはとうとうブチギレ。

 

何をやってもうまくいかない。

そんな自分に嫌気がさし、疲れ切ってしまったルーウィン。

 

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そして、映画はラストへ。

この映画、何がすごいってラスト寸前で、「おっ?」という展開が待ち構えています。笑

 

「何をやってもうまくいかない」

「自分はなんて中途半端なんだろう」

こんなふうに今の自分に納得がいかない人はたくさんいると思う。

実際に、私も納得いっていない。

それでも、どうしていいのかわからない。

自分の夢や希望が行動に伴っているだろうか。努力できているのかな。

そんなことを考えてみても、努力が足りないことは、人に判断されるでもなく、自分自身で痛いほど分かっている。

 

分かっているのに、「日常」がそれを追い越していく。

 

ルーウィンほどの才能もなければ、努力しているかどうかもわからないけれど

観ていて自分と重なる部分がいくつかあった。

 

周りにいるハッピーな人々をみて、「こうなりたい」と心のどこかで思っているくせに、

実際に自分がその世界に飛び込んで同じようにハッピーに振る舞えるかと言われれば

それもなんだか“自分”じゃない気がして、できない。

ルーウィンのヘタクソな対人関係や少しだけ濁ってしまった心の純粋さに共感を覚えずにはいられなかった。

 

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何がどうあれ、自分がどうあがこうと、現在の自分が立てるその場所に立っているしかない。

それが嫌なら、色んな方法で自分を曲げてでも変化していく他ない。

それを成長と呼ぶのならば、ルーウィンはいつまで経っても成長できない男なのだと思う。

 

それでも、ボブ・ディランというフォーク界を大きく変えた男は、

ルーウィン(モデルとなったシンガーデイヴ・ヴァン・ロイク)に憧れた。

彼がいなければ、ボブ・ディランというシンガーはこの世に誕生しなかったかもしれない。

 

遷りゆく時代の中で「自分らしく生きていくこと」について、淡々と描かれていた映画だった。

 

きっとこの映画、噛めば噛むほど味が出るスルメイカ的映画。

観終わった後に、映画を思い出しているうちに自分なりのいろんな解釈が増えそう。

 

物語は地味なものの、出演者は豪華キャストなので、そんな部分も楽しめる。

特に、ジャスティン・ティンバレイク演じるハッピーな男、ジムはどこからどう見ても善人なのに、

ルーウィンに感情移入していると、観ていて素晴らしくイラついてきます。笑

 

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ジョン・グッドマン演じるジャズシンガーのローランドは、とにかく不快なオヤジ。笑

車中のイビキのみならず、杖でコツコツ小突いてくるあたり、

さすがジョン・グッドマン。イラッとしながらも、とってもファニーで憎めません。

 

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さらに、女子必見!w

ローランドの付き人ジョニーを演じたギャレット・ヘドラントのかっこよさが異常です。無愛想でほとんど喋らないのに、動きのひとつひとつと吸い込まれそうな輝く瞳にノックダウンすること間違い無し。笑

 

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ああ、しびれちゃう。

 

本作、わりとユニセックスな映画だと思うので、彼氏彼女とDVD借りてまったり観るのにオススメです。

 


映画『インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌』予告編 - YouTube